けが予防~5点式シートは肩ベルトも固定を!2 [医学~臨床]

症例や勧告に学び、チャイルドシートの重要性を
確認してほしい!シリーズ。(名前が長い^^;)

今は5点式チャイルドシートの安全性について
肩ベルトを装着していないために大けがを負ったこどもの症例を紹介しています。
http://mainichi-benkyou.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
(個人が特定できないよう、一部改変しています)

対向車線の車が、路肩にぶつかりその反動で中央線を越えて
この家族の軽自動車に衝突!高エネルギー外傷事故でした。

運転していたお母さんと一緒に、この子供も救急搬送されました。

上肢はばたばた動かすものの、下肢は全く動かしません。
外傷を診たことがある人ならすぐにわかる、脊髄損傷でした。

画像検査をしたところ、
首の骨の一部が骨折し、それにより骨の並びがいったん破綻したため
骨の空洞部を通っている脊髄に強い圧迫・牽引が起こり
頸部レベルで脊髄損傷しているとの判断でした。
その他の各種理学所見も、脊髄損傷を示しています。

それ以遠の脊髄へ、脳からの信号が届いていかないために
全く下肢を動かすことが出来なくなってしまいました。

まだ1歳7か月です。
回復する可能性がないとは断言できないものの、
これからの人生のほとんどを、脊髄損傷の状態で過ごすと思うと
痛ましく悲しい気持ちでいっぱいになります。

また、この子供は頭を助手席の背面部にぶつけて、
頭蓋内にも外傷性出血を負って、その影響が出ています。
もともとはたくさん言葉をしゃべっていましたが、
話ができなくなってしまいました。
当初は視点も定まらず、精神面の発達・回復も心配されています。


この事故、チャイルドシートを肩ベルトまで正しく着けていたら
もう少し軽症だったのではないかと思えてならないのです。

というのも、首の骨折や並びの異常から推察するに
怪我を負った大きな力は、頸椎過屈曲のようなのです。
つまり、首が前方に大きく揺さぶられて
その力に耐えられずに骨折したようなのです。

肩ベルトをしていれば、てこの原理で考えると
支点は両肩になるでしょうから
頭や首が揺さぶられる幅も少なかったでしょうし
首に働いた前方への力も少なかったと思われます。

もちろん、これからを考えて前向きに診療をしていて
少しずつの進歩に目を向けながら、前進しています。
しかしどうしても、その一回だけ
チャイルドシートに乗るのに肩ベルトをしていなかったことが
悔やまれてならないです。

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kick_drive

こんばんは。車を運転していると相変わらずどうしようもない親がいますね。いろいろ騒がれているのに理解できません。
by kick_drive (2014-07-28 21:15) 

Kite

kick_driveさん、いつもありがとうございます。
確かに残念な光景は良く目にしますね。
このシリーズ最中にも、ワンボックスタイプの軽自動車で、信号待ち中に子供が助手席から後部座席に移ったり、後部座席で飛び跳ねたりしているのを見かけました。
こどもは社会の宝ですから、そんな姿を見ていて心配です。
by Kite (2014-07-29 15:24) 

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