実際のバイスタンダーの躊躇 [講習会]

先週から、アメリカ心臓協会(AHA)の
“心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010”の勉強を再開しています。
http://mainichi-benkyou.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16-01 から
第16章の教育・実施・チームの部分から
バイスタンダーCPRに関するパートを勉強してきました。

この部分を再度丁寧に勉強するきっかけになったのは
2年目を迎えた院内研修会に参加した、ある看護師さんからのコメントでした。


外傷による心肺停止の方だったそうですが、
その患者さんを目の前にして彼女はまず「自分に助けられるかしら」と思った後、
「口から血が出ているけれど人工呼吸はしなくていいかしら」と迷ったそうです。
今ならば、胸骨圧迫だけのCPRも知っている人が増えましたが
当時は全くその知識がなかったので、
清潔な布をあててでも人工呼吸すべきだったかなあ・・と後悔したりしたそうです。

また、彼女のコメントから私が一番大事だと考えたのは、
昨日の記事の最後の部分でもありました。
「ショックを受けた場合には、支援とカウンセリングを受けた方が良い」かもしれません。

できれば仲間がそんな体験をした時に、
タイムリーに話を聞く機会が持てれば良かったなあと思います。
そして次に繋げるモチベーションに早く切り替える手伝いが出来たら良かったなぁと。


蘇生教育に長く携わると、教育を受けた人が院外で蘇生を試みて
その患者さんが社会復帰したりすると、
普段の診療で患者さんの治療をする時以上に嬉しくなります。
しかし、その教育を受けた人でも、蘇生を試みた直後は
何らかのマイナスの影響を受けている可能性があります。
そこへのフォローも忘れてはいけないなあと思いました。

また、バイスタンダーを増やすために訓練を!と言っていますが
何が障害になりやすいのかを見落としがちです。
2008年にHands-only CPRが導入された時に
「もっと手順が簡単になればバイスタンダーが増えるはず」と短絡的に考えがちでしたが、
それ以外にも、怪我への恐怖・助けられない事への恐怖をはじめ色んな要素がある事を、
その看護師さんの言葉と、今回のガイドラインの丁寧な勉強で再認しました。

実は私も、思いがけなく目の前で、院外心停止の患者さんに対応した事があります。
勤務先で、誰か(救急隊・病棟スタッフ)に請われて対応するのと
目の前で心停止になった患者さんに対応するのとでは、全然違う事を実感しました。

CPRや蘇生技術はスキルも知識も大事です。
そして救命行動を今後も繋げていくためには心情への配慮も欠かせません。

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hokum

こんばんはkiteさん
そうですね自分もずっと前に消防署でAEDの使い方とCPRの講習に
受けた事ありました。やはり消防署で習うとリアルにやりますよ
例えば「買い物中に人が倒れてた」想定して救急隊員さんに引き渡すまで
でしたよ^^昔は良く刑事ドラマとか海外ドラマでCPRの場面があったの覚えてますよ
by hokum (2011-06-21 19:02) 

Kite

hokumさん、いつもありがとうございます。
リアリティのある設定は大切ですね。
ドラマなどでもCPRの場面があると、思わず
「もっと深く押さなきゃ!テンポが遅い!」なんてつっこんじゃいます(^^;
by Kite (2011-06-22 17:17) 

T-CHIRO

いきなり目の前で人が倒れたり、倒れてる現場に遭遇したら心肺停止だったとして、いきなりAEDの使用や胸骨圧迫することができる人はいないのが普通かもですよね(私もですが)
いきなりだと、訓練受けている医療従事者でも少し躊躇することがあるとすれば、ずぶの素人がいきなりAEDや、胸骨圧追などの対応をするのは非常に難しいと思ってしまいますし、冷静に対応できないのが普通のようにも思います。
by T-CHIRO (2011-06-25 08:40) 

Kite

T-CHIROさん、いつもありがとうございます。
意外かもしれませんが、医療従事者でもマメに胸骨圧迫やAED使用の訓練を受けている人は少ないものです。
さらに人の命がかかる処置は、特に慣れない病院外では
訓練していても躊躇してしまう様な状況でもあるんですよね。


by Kite (2011-06-26 15:24) 

taji

こんにちは。
ずっと頑張ってきた調査研究の論文がやっと完成しました!
ぜひ読んでください!
by taji (2013-11-25 14:54) 

taji

ホームページのリンクです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/16/5/16_656/_article/-char/ja/
by taji (2013-11-25 14:55) 

たじ

いきなり、論文の紹介をしてしまい、すみませんでした。
コメントは消せないのですね(^_^;)
私は消防署で救命士として現場に出ているものです。
あるバイスタンダーの方と出会って思い悩んでいる姿を見て、何か違う、人助けをしたのにその行為に悩んでるなんておかしいと思い、バイスタンダーの気持ちが知りたいと調査をはじめました。
論文はその結果です。
お時間がある時にでも読んでください。
失礼しました。
by たじ (2013-11-26 09:45) 

Kite

たじさん、コメントと論文のご紹介ありがとうございます。
拝読しました。とてもエネルギーを費やされた研究で尊敬します。
心理の専門家も共同著者として入り、説得力のあるPaperとお見受けしました。

Post-event careについて、たくさんの方が興味を持って
実際にBLS実施した後にはストレス反応が起こりうることを
バイスタンダーになりうる人は知っている、というのが理想ですね。

調査・解析と執筆、たいへんお疲れ様でした。
by Kite (2013-11-26 15:51) 

たじ

読んでいただき、ありがとうございました。
バイスタンダーの率直なお話しを聞いていますが、いろんな意味で勉強になりますし、また心に響きます。

引き続き調査をしていきたいと考えてます。
今後ともよろしくお願いします!
by たじ (2013-12-02 21:33) 

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